映画TV関連分野

大商社の壁から...

アナモフィックレンズ

しかし、映像ビジネスに熱意を持つ創業時の社員たちは、映像の世界で活躍したいという意欲に燃えていました。輸入商権は大手商社に押さえられていてもできることはないか?悩んだ末、まずはレンズを改造することを考え付きます。

当時、ハリウッドでは70mmフィルムを使った巨大ワイドスクリーン映画が制作されていました。1959年制作、ウイリアム・ワイラー監督、チャールトン・へストン主演の「ベンハー」が有名です。制作に6年余、総額54億円の制作費ともいわれる破格の大作です。しかし、経済は復興してきたものの、当時の日本にはこのような大作を制作する経済力はありません。 一方、観客には邦画であっても、迫力の横長ワイド画面を楽しみたいという希望(ニーズ)がありました。そこで、35mmフィルムに横長画面を圧縮して撮影するための特殊レンズ(アナモフィック)レンズの潜在的需要を見いだしました。

最初はレンズの先端部にアナモアダプターを取り付けたレンズを実用化します。しかし、レンズの先端部につけるアダプターはレンズが大型化し使い勝手がよくありませんでした。 そこでレンズ後端部にアナモアダプターを取り付ける方法に変更し、撮影現場での取り回しを向上させました。同時に、映写用アナモレンズも実用化し、撮影、映写双方にビジネス機会を増加させました。

これらアナモフィックレンズはヒット作となり、創成期のナックにとって大きなターニングポイントになりました。ナックは単なる小売店から自社製品をつくるメーカーへ一歩を踏み出したからです。「技術による差別化」が可能であることが体験されました。これは現在にまで至る、ナックの普遍のコンセプトとなりました。