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大阪万博、国家的祭典への挑戦

展示映像のフィルムコンテより抜粋

1970年、大阪で万国博覧会が開催されました。市川監督は博覧会のメインパビリオンである「日本国政府館」の主展示映像を手掛けることになります。映画監督:市川崑、音楽監督:山本直純、脚本:谷川俊太郎という、当時日本の新進気鋭のクリエーターが結集しました。

巨大な日本国政府館は、五片の桜を模った万国博覧会のマークと同じ形状です。五枚の花びらの一枚に当たる円筒形の建物がシアターとなっていました。この円形シアターの約1/3が湾曲したスクリーンで、上下二段、左右四枚の合計8面マルチ上映を行いました。 全体のスクリーン横幅48m、縦幅16mで、当時は世界最大のサイズを誇りました。 観客数は500席を数える巨大シアターです。

大阪万国博覧会の日本館全景

万国博覧会は復興し高度成長する日本を象徴する国家的祝典となりましたが、ナックにとっても歴史的な出来事でした。このときナックは創業以来はじめて、自社製のカメラを設計・製造したからです。またカメラ設計・製造にとどまらず、撮影支援、シアター設計、6ヶ月間に及ぶ会期中の映写業務と、展示映像のはじめから終わりまですべてをサポートしました。

市川監督の意図は巨大画面とマルチスクリーンによる、圧倒的迫力の映像美と没入感の創出にありました。ナックは横走り8パーフォレーション(通常の映画カメラの2倍のサイズ)の高画質映画カメラと、それを8台同期撮影することによってその要望に応えました。

35mmダブルフレームカメラ(MC358)撮影風景

これまで「技術による差別化」を実践してきたとは言え、はじめてのカメラ設計・製造は試行錯誤の連続です。その後は撮影支援による現場作業に明け暮れ、6ヶ月間の会期中は社長以下社員総出による映写業務をこなしました。ここに至って、「映像クリエーターのための総合的技術サービス企業」という思想がビジネス的にも確立されました。

なお、日本国政府館以外にも、ガスパビリオン、自動車館、三菱未来館など、ナックは合計18館もの大型展示映像を請け負いました。多くの方々のご協力と、社員の不眠不休の努力によってナックは大阪万博を大きなステップとして反転を遂げていきます。