視線計測への挑戦
一方、先述の横浜工場技術部は、まったく異なる分野での映像技術の発展のきっかけをつかみます。それは創設後間もない航空自衛隊からの要望でした。当時航空自衛隊ではヘリコプターパイロットの効率的な育成が課題となっていました。熟練のパイロットと初心者のパイロット、離着陸時の視線の違いを知りたいとの要望です。熟練者は当然、各種計器、地上の様子など過不足なく目配りします。それを初心者に教えること、また初心者との視線の違いを指摘することによる教育効果が期待されました。
ナックはNHK放送技術研究所の協力を受け、弱い赤外線を眼球に照射しその反射光によって視線の動きを検知する手法を実用化しました。これはEMR-Iという視線計測装置として製品化され、以来現在のEMR-9に至る製品群の始祖となりました。
- ドライバーの運転中の視線。カーナビを見ていて歩行者を見損なっていないか。
- 航空機や自動車などの計器盤の配置は適切か。
- 原子炉の制御卓の計器配置は適切か。
- 医師や看護師は手術中に何を見ているか。
- 薬の処方ミスはないか。
- 熟練の外科医と初心者の外科医の患部の見極め方の違い。
- 商品陳列の仕方による購買行動の違い。
- 目に留まる広告やサイン。
- うそをついたときの人の視線の動き。
「人間がいま何を見ているのか。」
この素朴な疑問に答えることは、さまざまな応用が期待されました。
次回:「今日のナック」へつづく...