飽くなき研究への情熱。火星探査を視野に|ユーザーズボイス04

眼に見えない世界を捉える
研究者の情熱

九州工業大学 大学院工学研究院 機械知能工学研究系准教授

平木 講儒

豪ニューサウスウェールズ大学 キャンベラ校准教授

ハロルド・クライネ

飽くなき研究への情熱。
火星探査を視野に

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今回の実験では当社のハイスピードカメラを使用して頂きましたが、ここでは風洞実験のスペシャリストであるおふたりから、ハイスピードカメラに対する「もっとここがこうなっていたら」という要望をお聞きできればと思います。

平木

おそらくクライネ先生からたくさん要望がでると思うので(笑)、私からはシンプルな希望をいくつか。まず、私の研究でいうと瞬間を高速度で撮るものだけでなく、長時間かけて変化していくもの、その変化の過程を捉える機能で何か便利なものが欲しいと思いますね。

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それはたとえばタイムラプス(微速度撮影)動画のようなイメージでしょうか?

平木

タイムラプスの場合、不連続性がありますよね。イメージとしては近いのですが、ああいう不連続性を感じずに、変化した部分を抽出して追跡できるものが欲しいですね。
次に、ソフトウェアについてですが、最近のソフトは高機能化して機能が盛りだくさんです。それはユーザーにとって有り難いことですが、その反面インターフェースが複雑になる傾向があります。そこで、むしろ初期設定はシンプルにして、利用者の必要に応じて機能を付加する形でも良いのではないかなとも思いますね。

──

ありがとうございます。では、クライネ先生はどうでしょうか。ぜひ要望を聞かせてください。

クライネ

では遠慮なく(笑)。
カメラに付属するコントロールソフトですが、データ変換フォーマットの選択肢をもっと増やしてもらえるとうれしいですね。ユーザーが目的に応じて更に変換形式を自由に選べるようになれば、複数のソフトを組み合わせて変換を行う煩雑さからも開放されますし、データ変換に掛かる時間を研究者が効率的に使用できることにつながります。次に、追加して欲しい機能としては「スキップ保存」です。1000コマ/秒で撮影したけれども、撮影の結果を見るとそんなに速い現象ではなく500コマ/秒程度の撮影でも良かったということは良くあります。そうした際に、全フレームを保存するのではなく、コマ飛ばしで保存できるオプション機能があると便利です。「もう一回実験を」というのは、手間が手間だけになかなか難しいのです。

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貴重なご意見ありがとうございます。研究部門に伝え、開発のアイデアにさせて頂きたいと思います。
さて最後の質問の前に、ひとつだけちょっと軽めの質問を挟ませてください。
今回の取材でおふたりのパートナーシップがすごく良い関係なのだな、ということは実験の様子、さらにこのインタビューでもすごく伝わってきたのですが。あえて「ここはちょっと直して欲しい」ということはないのでしょうか。

平木

難しい質問ですね(笑)。そうですね、クライネ先生との共同実験は楽しいですし、何よりいつだって手を抜かず、全力で実験に臨む姿勢には本当に敬意を持っています。せっかくのご質問だからあえて言うと、いつも一生懸命で、それこそ時間を忘れて実験に臨むクライネ先生ですが、お腹もすくし、眠くなるから「時間を見て休みましょうね」ってことをお伝えしておきましょうか。本当にそれくらい実験に没頭するんです彼は。

クライネ

平木先生との関係で残念なのは、いつもは互いに離れていて年数回しか会えないこと。互いが近くにいれば、もっともっと実験ができるのにと思います。
あと、おそらく平木先生は私の食事のスピードに不満を持っているのではないかな。私自身分かっているのだけれど、食べるのがとても遅いんですよ。特にお米を食べるのが遅くてね。牛丼屋さんに一緒にいったら私は1時間くらいかかってしまう。よく平木先生は「遅いな〜」という顔をして待っているけれど、あれでも頑張って早く食べているのですけどね(笑)。

──

ではインタビューの締めくくりとして、この先、おふたりが測ってみたいと思っているもの、今後の研究目標を最後の質問とさせていただきます。

クライネ

今、この設備では60cm四方の範囲が測定できます。それはかなり広範囲ではあるのですが、希望としては人ひとりがすっぽりと収まるような、2mから3mくらいの範囲を計測できる装置で、大きなスケールで飛翔物を測ってみたいですね。これはJAXAへの要望としておきましょうか(笑)。

平木

私のテーマのひとつに、将来の火星探査を目指し、火星大気上を飛ぶためのプロペラの研究があります。火星上の大気は二酸化炭素が中心なので、地球の場合よりも非常に速く音速に近づいてしまいます。その際、プロペラに抵抗が増えて推進力が減ってしまうため、その抵抗をいかに抑えた設計を行うかが重要になってきます。当然、風洞でさまざまなシミュレーションを行うことが必須なのですが、プロペラ状の物を音速で回転させるとなると、被験物自体が回転によってどのような動きをするかわからないので、安全面の確保など、さまざまな課題をクリアしなくてはいけません。今すぐは難しいかもしれませんが、ノウハウを積み上げてプロペラの音速風洞実験を実現させ、将来の火星探査プロジェクトに貢献していきたいですね。

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冒頭で平木先生が「はやぶさ」は、宇宙研究に関わる多くの人の努力の結晶だとおっしゃったように、平木先生やクライネ先生の日々の地道な研究は、まさに火星探査という壮大な夢につながっているのですね。見えないものを「見る」、分からなかった現象を「捉える」、そしてそれは見果てぬ宇宙へと続く。今日はサイエンス、研究の持つロマンを知ることができました。長時間にわたってどうもありがとうございました。

Quizの答え

「風船。ヘリウム風船を破裂させた瞬間のシュリーレン映像」