データ計測の持つ可能性をさらに探る|ユーザーズボイス02

最新のスポーツギア開発を
支える「計測」の力

ミズノ株式会社

古川 大輔・島名 孝次 

データ計測の持つ
可能性をさらに探る

──

システムの導入にあたっては、おそらくいくつかの製品を比較したと思いますが、MAC 3Dシステム選定の決め手は何だったのでしょう。

古川

まずは使いやすさですね。ナックさんを含め、他社製品もここで実際にデモしてもらったのですが、その中でMAC 3Dシステムが特にユーザーインターフェースなどの面で使いやすいように見えた。操作が直感的で、素人にも扱いやすい印象を受けました。

──

実際にはどうでしたか。

古川

思った通り非常に扱いやすい製品ですね。ただ使い込んでいく中でいろいろと感じることもあります。たとえば、もう少しキャリブレーションが簡単に行えると楽だなと思います。この場所は機材をほぼ常設設置していて計測のための基本的準備はできていますから、しょっちゅうそう思うわけではありませんが。 それと、私たちが所有しているバージョンの機材では屋外の太陽光下での測定が難しいのが残念ですね。ここは走路の距離があまりないので、長い距離での運動動作を測定しようとすると屋外に機材を持ち出すしかなく、その場合は陽が落ちるのを待たなくてはいけません。最新バージョンのカメラは既に屋外キャプチャーに対応していますよね。

──

おっしゃるとおり、最新製品は太陽光下での測定に対応しています。こちらの機材は導入して約8年。使い倒しているということですから、そろそろ機材更新はいかがでしょう?(笑)

古川

幸い、この製品は丈夫でまだまだしっかり動いていますから(笑)。

──

最後にこれからの展開として、個人的な見解でも構いませんので、こうしたデータ計測技術の持つ可能性についてお願いします。

古川

当社では、店舗においてこのシステムの簡易版のような形でお客様のランニングフォームを解析し、シューズなど最適な用具を選択するサービス「F.O.R.M.」を提供しています。 現在はランニングに特化したものですが、将来的にこうしたシステムが普及し、コスト的にも導入が容易になっていけば、オーダーメイド型、カスタマイズ型などのスポーツ用品の提供サービスなどが考えられるかもしれません。特に高齢化が進み、健康維持のための運動需要が高まっていく中では、よりきめ細かな個々人の特性に応じた用具やウエアなどが求められるでしょうから。

島名

ウエア開発での可能性を考えると、皮膚に密着する水着やスパッツの分野の話になるのですが、このシステムが持つ皮膚の伸び縮みを忠実に再現できるという利点から、単に動きやすいだけでなく、素材が伸びた後に戻す力が運動をサポートしてパフォーマンスに直結するようなウエアができるかもしれないとも考えています。 また設計の効率化、データをより有効利用すると言う視点では、パタンナーが使うCADの進化とも関係してきますが、得られたデータをよりダイレクトに設計につなぐと言うことを考えていかなくてはならないでしょうね。。

──

実は今日、こちらの本社一階に展示されている商品に触れびっくりしました。オリンピックで使われた陸上スパイクは驚くほど軽いし、サッカースパイクのスタッド配置なども昔とは全然違ってすごく複雑になっている。もはやスポーツギアはテクノロジーの結晶なのですね。

古川

そうですね。まさにこの場所は、そうした製品開発の基礎となるデータを収集する場所なわけです。

島名

ただデータ自体を取ることに他社との差はそんなに大きな物はないと思っています。もちろんデータの精度は重要であることは言うまでもありません。その中で我々の強みは今日のご紹介させていただいた独自の3D-CGモデルを持っていること、計測したデータを骨格や皮膚の伸び縮みまで、解剖学的な知見をふまえて正確に可視化できることだと思っています。

──

日本代表選手のゴール、あるいは世界大会でコンマ何秒を削った新記録の裏には、彼らのパフォーマンスを最大に高めるための用具開発がある。そしてそこには緻密なデータ計測・解析がまずベースにあるわけですよね。今日のお話でスポーツを観る目が少し変わりました。