10億コマ/秒の先を見据えて|匠の技06

10億コマ/秒の先を見据えて

 

IVVとナックによるウルトラハイスピードカメラ は2010年に<ULTRA Neo>として商品化(後に<ULTRANAC Neo>に改称)。両者による開発はさらに継続され2017年には最高10億コマ/秒、12フレームの超高速撮影が可能な<ULTRANAC Tau>を発表し、これまで捉えることのできなかった放電、プラズマ、衝撃波、飛翔体などの研究領域に新たな可能性を拓く。
 世界最高域のウルトラハイスピードカメラが再び自社製品にラインナップされ、現在、柳は引き続きこれらの製品についての国内技術対応を行なっている。

 

「<ULTRANAC>の高圧でのシャッター制御に比べると、<ULTRANAC Neo>、<ULTRANAC Tau>の性能はさらに高度化しました。同時に技術的には非常にこなれてきており、スイッチングに関する部品も昔に比べてスピードも含め安定した製品で構成されています。その意味では『難しいこともシンプルに構成する』という彼の設計思想が形になっていると思う」と柳は話す。また、同じくリッチズも「<ULTRA8>で用いたシンプル設計という思想を<ULTRANAC Neo>、<ULTRANAC Tau>は受け継いでおり、この思想は今後も通用すると信じている」と自信をのぞかせる。

ではこの2つの製品を軸に、ナックとIVVによるウルトラハイスピードカメラは今後どのような方向に向かっていくのか。

 

「この仕事は社内でも他のエンジニアが扱う技術とは明らかに異なり、その点では自分にしかできない仕事だと思っていて、面白みもやりがいも感じている。ただ一方でさらにユーザーと密に関わり問題解決に関わることで開発にフィードバックできること、自分にできることがまだあるとも思っている」という柳に対し、リッチズは「今後も技術の向上を目指していきます。しかし、自分一人では技術を製品にすることはできません。ナックは新しい技術やアイデアを製品化することに優れています。これからも先端の映像技術開発を共にやっていきたいと思っています」と話す。

 

気になるのは<ULTRANAC Neo>、<ULTRANAC Tau>に続く新たな何かだが、リッチズは「それはもちろんあります。でも、秘密だね」といい、柳の方を見ていたずらっぽく笑うだけだ。

マーク・リッチズ
インビジブル・ビジョン代表

 

柳与志嗣(やなぎ よしつぐ)
技術本部 特機設計部
1987年入社 工学部電子工学科卒