特注品で培った設計思想|匠の技04

「特注品で培った設計思想」

特注品設計という高度な技術課題への取り組み。そこで蓄積された水野らの技術は、当然、ナックの標準製品へもフィードバックされていく。直接具体的な技術が移植されるということもあるが、むしろ重要なのは問題を解決へ導く筋道の立て方だ。

 

一つ具体例を挙げるとしたら、超高速デジタルフレーミングカメラ<ULTRANAC Neo>だろう。最高2億コマ/秒で12フレームの撮影が可能なこのカメラは、放電、プラズマ、衝撃波、材料破壊など、超高速現象を可視化し、先端領域の研究をサポートしている。

 

2億コマ/秒での撮影を実現するコアとなる技術はカレイド(万華鏡)光学系というもの。4枚のミラーを貼り合わせた構造のカレイド光学系は、その名の通り万華鏡の原理でレンズを通して入力された画像を複数出力ができる。<ULTRANAC Neo>にはこの光学系にくわえイメージインテンシファイア(光増幅装置)、CCDカメラなどが組み合わされている。<ULTRANAC Neo>に搭載されているイメージインテンシファイアは入射面が複数のセグメントに分割されていて、かつセグメントを独立して動作させることができるもの。その撮影方法を簡単に説明すると、万華鏡の各セグメントに出力される画像を微小(最小5ナノ秒)にずらしてシャッター動作を行い、その画像データをソフトウェアにより位置補正をしながら1フレームごとの画像として切り出すことで超高速の連続画像を得られるという仕組みだ。

 

セグメント分割されたイメージインテンシファイア

実は<ULTRANAC Neo>の開発初期段階では「ステレオスコープのような構造でピラミッドミラー*2を用いた画像出力が検討」されていた。だが水野は開発を進める中、旧機種(ULTRA8)で採用していた方式の改良を選択する。
 
「ULTRA8ではカレイド光学系によりセグメント分割される画像 8枚を使って超高速画像を得ていました。記録枚数を12枚に増やすために構造は若干複雑になっていますが、ULTRANAC Neoもほぼ同じカレイド光学系を採用しています。記録枚数が12枚となり、画角が大きくなってしまうことによるディストーション(歪曲)を極小に抑えることが課題でしたが、レンズ枚数を増やして収差を最適化することにより解決できると判断しました」と水野は言う。

 

まさにこの技術判断などは「確実に要求に応える」ことが最大のミッションである 「特注品」で培ってきた“ものづくり”の設計思想から生まれたものと言えるだろう。

 

*2 正四角錐型のミラー。ピラミッドと同じ形で4つの側面にミラーコーティングが施されている。底面に垂直な方向から来る光を4方に分割することができる。

ULTRANAC Neo