研究の一員だという気概|匠の技04

「研究の一員だという気概」

技術は常に進化する。また進化することで「さらなる疑問」が生まれ、研究者や技術者たちは、その解明に心血を注ぐ。「なぜ」「どうして」。飽くなき知への欲求がサイエンス、テクノロジーを前へと進めてきた。技術者、研究者に寄り添ってきたナックの技術もまた同じだ。

 

たとえば研究開発の現場から長年にわたって求められている可視化のテーマに「非接触での温度解析」がある。具体的な例としては溶接時の温度、エンジン燃焼時の火炎の温度分布をより正確に知りたいというものだ。対象となるのは1000度〜2000度にもなる高温。しかも溶接やエンジン動作時の正確な温度分布を知るとなると、温度計を対象物に接触させること自体がノイズとなってしまうという問題があった。

 

この命題に対しては、異なる2つの波長によって対象物の画像の明るさを測定し、その差異を解析することで細かな温度分布を解析するという方法に着目した。同一センサー内に2つの異なる波長の画像を取得する装置として完成するこの<二分岐光学系 TM2S>は、後日学術研究でも活用されるようになる。

 

「<二分岐光学系 TM2S>は開発にかなり時間を要しました。設計はもちろんですが、このテーマは多くの分野で研究が進められているので、なかでも技術特許の問題をきちんと調べることに時間を費やしました。論文を調べ上げ、最終的には原理的な技術を見つけ出し、それならば特許もクリアできることが分かり、開発をスタートしました。もちろん『なんでもいいからどうにかしろ』と言われればいくらでも設計はできます。でも私たちが製品を世に出すには、特許の問題もそうだし確実に“形”にすることが求められる。だから中途半端に開発はスタートできないんです」

 

開発の基本スタンスを水野はそんな風に話す。

 

そんな水野に「ではナックの強みはどこにあるのか」という問いを最後にぶつけてみると、意外にも自分たち設計のみならず、製造部門の存在をあげる。

「どんなものも形にしてくれる製造部門の存在が大きいですね。変な言い方になるけど、どんないびつな設計だとしても確実に物として仕上げてくれる。図面を見て「ふざけるな」「ばかやろう」って思っているかもしれないですけど(笑)。彼らの力があるからこそ、案件が持ち込まれた時、それが相当難しい内容だったとしてもナックの場合はすぐに『できない』とは言わない。そんな文化があると思います。できるかどうか徹底的に検討して、可能性を最後の最後まで探り続ける。それが自分たちの誇りと言えば誇りになるのかな」
 
そして水野はこんな風に言葉を継ぐ。

 

「技術者や研究者の方の要望に製品として応えることが自分たちの最大の役割です。でもそれを私は“下請け”としては捉えていないんです。互いに高め合う、開発を通じてお互いにさまざまなことを学び、それが次につながっていく。理想かもしれないけど、そうありたいと思っています」

水野重智 (みずのしげとも)
技術部特機グループ
1990年4月入社 工学部卒