車いすマラソンの研究|ユーザー事例

     
  • 今日本では、オリンピック・パラリンピックに向けて、代表選手の動作解析が活発に行われています。その中でも、パラアスリートを対象にしたバイオメカニクス分析に注目が集まっています。

    MAC3D Systemのユーザーである熊本保健科学大学では、車いすマラソン選手のバイオメカニクス解析を行うシステムを開発し、国内外から注目されています。

  • 研究・計測の概要

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    車いすマラソン選手の動作解析には、モーションキャプチャー「MAC3D System」と、熊本保健科学大学とホンダが共同開発した「車いすにかかる力を計測する装置」を組み合わせたシステムを使用しています。

  • MAC3D Systemで選手の動きを計測します。頭、背中、両腕に反射マーカーを付け、選手の特徴点の三次元データを取得します。

    車いすにかかる力、駆動力を計測する装置は、ローラー台になっており、選手がその場で全力疾走できる構造です。車いすマラソン選手がホイールに手を触れると、高精度なセンサーでその力を計測し、ホイールにかかる力の向きや大きさを取得することができます。

    MAC3D Systemの動作データと、車いすにかかる力のデータは時間同期されて計測されています。この同期した2つのデータを筋骨格解析ソフト nMotion musculousに搬入し、選手の肘や肩にかかる力や筋力を推定します。

  • 車いすマラソンでは、ホイールを手でこぐ時のフォームがパフォーマンスの鍵を握っています。
    これら解析データを使って、選手のフォーム改善に取り組んでいます。どのフォームが効率的にホイールへ力が伝わるか、加速をするために最適な力を最適な時間に発揮しているか、などを推定したデータから分析しています。

  • 計測の結果

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    パラリンピックに出場したことがあるパラアスリートがこのシステムを使用しています。このシステムの計測データより、新しいフォームの模索と、そのフォームの評価をしています。

    新しいフォームに関しては、上肢を大きく前に倒してホイールをこぐことで、より加速できることを突き止めました。そのフォームでトレーニングをして、数ヵ月後に計測を行った結果、以前よりも速い速度で走れるようになっているという結果を得ています。

    熊本保健科学大学では、2012年12月にトップクラスの車いすマラソン選手に対してバイオメカニクス的な分析を行っています。

    <参考文献>
    松原誠仁1)出口太一2) 鏑木誠1) 山本行文3)
    1)熊本保健科学大学保健科学部
    2)熊本保健科学大学大学院保健科学専攻
    3)医療法人社団寿量会熊本機能病院
    トップクラス車いすマラソン選手の駆動動作の分析,日本障害者スポーツ学会誌 (21): 39‐44 2011

    この文献は、車いすをこぐ際の手の速度と、上肢の関節トルクについて注目しています。結果として世界一流の車いすマラソン選手が身体の内部でどのような力を発揮することで、効率のよい走りをしているかを明らかにしています。この文献の結果をもとにして、今回開発したシステムで計測したときのデータを分析し、フォームの改善をしています。

  • システム構成

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    ・使用カメラ Eagle×6台 / Raptor-E×2台
    ・nMotion musculous Ver1.57
    ・kineAnalyzer
    ・車いす駆動力計測装置

  • 車いすマラソンの研究 システム図
    システム図
    今後は、国内外のこれから車いすマラソンを始めようとする方に対して駆動フォームおよび力を計測し、最適なトレーニング法の開発や個々人の身体特性に応じた車いす開発などを行わなければならないと考えています。また、現在は車いすマラソンに特化した計測システムですが、将来的に研究レベルで成果が得られれば、さまざまなパラリンピック種目へ応用していく必要があるかもしれません。

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