フィルム計測からビデオ計測へ
高速度撮影用のフィルムカメラ(「高速度フィルムカメラ」と略します)では、撮影終了時、巻取り側のフィルムリールは慣性で回転を続けますが、フィルムの端は遠心力によってフィルムマガジンの内壁に激突し続けぼろぼろに砕けます。フィルムを交換するとき、粉のようになったフィルムくずの清掃が大変でした。
また、フィルムは現像してみなければ現象が確認できません。撮り損じていたかどうかは、撮影後に現像してはじめて分かるのです。いやがうえにも撮影時の負担が高まります。もちろんナックは撮り損じがないよう日々撮影の訓練を積み、その経験はお客様から厚い信頼を受けていました。しかし、撮った直後に映像を確認したいというニーズは高まりました。
- 各種爆発現象の解析。(そもそも米国で発展した高速度カメラの初期の用途は原爆実験における破壊力を観察、解析するためであったといわれています。)
- 原子力開発で配管内の液体や気体の流動を観察したい。
- 自動車エンジン内の燃焼を観察したい。
- ロケットエンジンの燃焼を観察したい。
- ロケットが打ち上げに失敗し、爆発するときどこから爆発が始まるか知りたい。
- 高速化するオートメーション機械のトラブル原因を観察したい。
- スポーツ選手の体の動きを観察したい。
- 自動車が衝突したときの破壊過程を観察したい。
- 自動車衝突時の搭乗者の動き(受ける衝撃と人体のダメージ)を観察したい。
など見たくても見られないことが次から次へと出現したからです。
そこでナックはビデオ式の高速度カメラ(ハイスピードビデオHSVシリーズ)を開発します。当時世界的なスタンダードとして認められていたVHSビデオテープ方式を採用しました。当時VHSテープは安価で、どこでも入手できましたのでHSVシリーズは大いに好評を博します。利便性が大いに評価され、ナックは高速度カメラメーカーとしての地位を確立しました。